スナップ撮影
概論
プロカメラマンを名乗る以上、あらゆる外出に必ずカメラを携行するべきである。求められるケースも多いが、トレーニングの機会も少なからず存在する。思いもしない営業宣伝に繋がる可能性も有り、その上にメモ代わりにもなる。
撮影時には必ず、プロとしてアマチュアとの差別化を図るべきであるが、デジカメ主流になった現代では、この事を達成する事は困難の度合いを強めていると言わざるを得ない。
銀塩の時代には、4×5か8×10をかついで行けばそれですんだからである。
どんなハイ・アマチュアでもブローニーが限界だったので、形として見せつける事が出来たのである。ただし、以前からスナップシーンだけはそうはいかない。
したがって、今も昔もプロカメラマンが最も頭を悩ましたのがスナップシーンなのである。
その為に、最低限の準備が必要な事は言うまでもない。これから、その注意事項を述べるが、これはプロカメラマンが修行の上でも仕事の上でも365日24時間意識すべき事柄であると言える。因みに筆者はこれが守れなかったがゆえに、この程度の生活しか手に出来ていない。なので、自分の事は棚にあげる。
前提
少しもスキーが出来ない人間は、スキー場でのスナップは不可能である事を知らなければならない。
これは、被写体の動きを知り、状況を把握して先に動くという事である。カメラマンは構図を決めるなどの「支度」の時間を取るために先に動く必要がある。被写体の側には当然その縛りはない。※サーフィンやラリーなどスポーツビデオのオフプレイショットは参考になる。
着る物
1.状況に会わせる。
フォーマルからカジュアルまで被写体から外れない服装を心がける。
(せめて、半袖ポロシャツやジーンズからグレースーツくらいは用意する。しかし半袖でも襟なしはN.G.ハーフパンツは場合によってはO.K.ただし、出来るだけ地味を心がける)
2.だからと言って極端は避ける。
例:海水浴場だからと言って水着では行かない。(自分が海に入らなければいけないマリンスポーツの撮影などがない限り)フォーマルな場だからと言って主賓より高級感のあるタキシードは避ける。(それくらいならノーマルスーツの方が数段まし)など、
3.結果、グレースーツが一番汎用的で有るが、あくまでもベストではなく次善の策であると認識すべきであろう。
補足:何故濃紺ではなくグレーか?
現状、ブルーブラックなどの濃紺が最もビジネスシーンでは一般的であろう。ただし、撮影時の円滑な工程を目指す場合、カメラマンはあくまでも被写体と一線を画すという事も双方の意識に必要だと考えられる。その為に出しゃばらない範囲で出来るギリギリのラインがグレーと言う色の選択なのだ。この手法は20年以上通用しているが、時代の変化によって左右されるのは当然の事だ。それ以前は「ニッカポッカ」や「ループタイ」とか「ハンチング帽」などが道具として機能していたが。現代においては珍奇な感が否めない。※ジャージ上下は、社員旅行や学童関係の数日間客と行動を共にする仕事では意外に使用頻度が高い。
一眼レフに付属させる基礎的な携行品。
1.タオル(2枚以上)
出来ればガーゼ地等の柔らかい物。(おろし立てはN.G.一回以上洗濯して糊などを落としておく)
機材などの清掃や、雨天時の一時的なガードなど、使用範囲は幅広い。被写体に子供がいた時などは、いわゆるそそうのケアにも使える。
2.レンズ2本
短い物:ズームなら35~50は必ず含む。50㎜もしくは35㎜の単焦点はそのくらいのシュート位置調整は難しくないのでズーム機能は無くてもレンズの明るさ等の性能面で有利と言えます。
長い物:受け持つフレームがシュート位置で調整できる範囲ではないので、ズームがお勧め。135㎜は必ず含む事。人物スナップにおいては一番汎用性が高い。
300㎜以上の望遠および24㎜以下の広角は、撮影目標が定かでない場合には出番が多いとは言えず、携行は困難さに比して必要性は少ないと言える。
※最重要項目
各レンズにフィルター(UVやプロテクター、スカイライトなどのエフェクト狙いでない物)フレア対策のフードの装着は必須である。これらの事故防止効果の重要性は、あらゆる機材の中で特筆に値するほど大きい。
フードの装着について、ケラレを気にして嫌う人がいますが、ケラレはトリミングによって解決する可能性が有ります。それに対してフレアはもうどうしようも有りません。フレアは、特にスピードを要求されるスナップシーンにおいてファインダーで完全に捉える事は困難で、その日のベストショットをフレアで潰された時のショックは膝から落ちるほどです。
3.電池、メディアカードなどの予備。
一応程度の数量で好いが、最低必要量+2程度は必ず用意する。(事故対応こそがプロの仕事)
4.レフ代わりになる物。
ハンカチ一枚。A4のコピー用紙一枚でもよいので、必ず携行する。出来れば遮光に黒い物も有れば便利。
必携ではないが有った方が好い物
1.2段の脚立
シュート可能位置が3Dになる。
2.ヘアブラシ
被写体のヘアを整える必要は意外と多い。
3.ガムテープ
遮光のために資材を光源に張り付けるとか、フレーム内の邪魔な物(意図に会わないペンダントライトやカーテン。外なら木の枝など)を一時どけて置く時のほか、洋服の埃取りにもなる。サイズの大きすぎる洋服を背後から少しつまむとかの使い方も有るが、これは記念写真などの場合で、スナップシュートではやりすぎでしょう。
注使用の際には、かならずじぶんの洋服などで数回貼り付けと剥がしを繰り返して粘着力を調整する事。気をつけないと家具などの塗装は意外とたやすく剥離してしまう。。
(自分の洋服の痛みを気にする人もいますが、意外と痛まないし、撮影者の着ている物は仮にタキシードであろうと作業服と考えるべき)
撮影機材屋に行くと「パーマセル」という商品名でローインパクトな割に粘着保持力の強い撮影用の黒いテープを売っていますが、びっくりするくらい高価なので現実的ではないでしょう。まあ、値段相応に便利ですがね。
余談ですが、CM撮影では一回の撮影に粘着テープに数十万円使う事が有ります。それほど重要な消耗品です。
4.手袋
突然の汚れ仕事や貴重品の扱いなど意外に出番は多い。
デイライトシンクロ、夜間および室内のためにストロボ(クリップオン)を持参した場合。
1.シューから離すためのコードか赤外線送受信装備
初めてライティングが可能になり、アマチュアとの差別化を図る事が出来る。またデイライトシンクロ時にこそ効果を発揮する。
2.トレッシングペーパーなどのディフューズ資材。
ストロボの発光面を覆えればいいので20×20位に切った物を数枚。取り付けには幅広の輪ゴムが便利なのでそれも必携。黒紗等もカメラ機材屋に売っているので試すと効果が違い面白い。既製品のディフューズカバーでも当然好いが、色温度が若干下がるという話も有る。しかし、どの道ディフューズにはつきものだし、必要ならば調整すればすむ事なので、この時代に問題とは思えない。
※カポックなどのバウンス資材も有れば便利だが、どうしてもなら撮影舞台を選べばいい事だし、利便性を考えればスナップシュートに必携とは言えない。
補足
デイライトシンクロは、不確定要素を数多くはらみ、できれば避けたい。出来るだけ被写体との位置関係で調整すべきである。
またどうしてもの場合は、ストロボはライティングを意識した位置関係に置くべきである。
(左斜め上方からのキーとして考えるとか、暗部に対する補足=抑え的に使うなど。室内なら天井などにバウンスして地明り的に使うなど、不確定要素を確定要素に変える努力を惜しまない)
決して、素人発想的に保険としてデイライトシンクロを安易に使うべきではない。
蛇足
カメラマンという商売にはいろんなカテゴリーがある。記念写真を撮る写真館のカメラマンや出張専門カメラマンや旅行に随行するカメラマン。イベント専門もいる。ファッションカメラマンや商品カットなどの広告写真。戦場カメラマンなどの報道写真家。スポーツ専門も野球、サッカー、サーフィン、カーレース。それぞれの専門家まで居る。動物写真家や山岳写真などのカメラマンもいる。
そしてその全員が、仕事の全部か一部かの違いはあるにせよスナップシューターだ。商品カットの専門家すら、いついかなる場合にも、クライアントからの発注の可能性が有るし、それにこたえる準備をしなければならない。
何故かというと、カメラを手にしているからだ。芸術写真と言われるほんの一部の写真家にすらクライアントの存在は大きい。そのためスナップからは逃れられない。
ならば、あえて人物スナップが一番うまいカメラマンはどのジャンルだ?と問おう。
筆者は、スポーツカメラマンが一番であると思う。それに準ずるのが戦場カメラマンなどの報道系。そして3番目が動物写真家と考える。これは、その作品を見れば明らかだ。特にスポーツカメラマンの撮ったオフプレイショットにはスナップ写真の理想形といった作品が多い。
理由を考察する。
先ずそれらのカメラマンが、瞬間を切りとる速度に長けている事があげられる。
次に「人間相手になれていない」と言う事で、動物写真家が一歩引く。
報道系が一番作業的にスナップに近いと思われるのだが、そうではない。
プロスナップは、そこに喜びや悲しみの感情をクライアントの意図通りに表現する必要があるからだ。ハレの日にはハレをという事である。報道と撮影者のスタンスが違うのである。
その点、スポーツカメラマンは被写体と一緒に踊る事が出来るのだ。
スナップシューターの必須条件は、1に事故のない事はもちろん、その次に大事な事は、クライアント=被写体とともに踊る事であると言えると考える。
0 件のコメント:
コメントを投稿