三脚の使い方-足を延ばす順序

 世の中には一般に些細と思われる事に妙なこだわりを持っている人がいて、三脚の使い方と言うのも一家言ある人にはあるようだ。足の延ばし方も、これが絶対という風に、まず根元の方から順に伸ばして行き、一番径の太い足を出し切ってから次の足を出せと言う人がいる。

 それで昔、写真館に勤め始めた頃、自分もそうやるものだと思って三脚の足を延ばしていたら、写真館の先輩に殴られた。彼曰く、どこでそんな事を覚えてきた、三脚の足は先の方から伸ばすのだ、と。

 そう。写真屋は三脚の足を、先の方からから出して行くのだ。

 何故か? それはスピードの為である。その方が設営、調整、撤収とも若干早くなるのだ。

 その一つの理由は、昔のナットロック式三脚は、ロックを操作する足より上側のすべてのロックは固く締めておく必要が有った為だ。不便なことに、根本がしっかりロックされていないと、その次の段の足がゆるゆると空回りしてしまうのだ。

それで具体的には、伸ばす時には、
1.先を緩め伸ばし切り
2.先を締め
3.元を緩め必要な所まで伸ばして締める。

たたむ時には、
1.先を緩め
2.元を緩め
3.全部縮め切った後根元、先の順で締める。

と言う順序が、この手の三脚では一番操作が早く、見た目もスマートだった。これ以外の順序で操作すると途端に手の動きがアッチコッチと忙しくなる。
尤も、この不便は今日日のほとんどの三脚では解決されている。

 先から出す方が動作が早い今一つの理由は、操作が常に手元で出来る事だ。

三脚の足の延ばし方
これが逆に先に太い方から出すと、次の段を出すためには手を大きく伸ばしたり、三脚を持ち替えたりしなければならなくなってしまう。そんな事をしている時にお客さんから「写真やさーん」なんて呼ばれるとアタフタしてしまうだろう。

 また、水平出し等、足の長さをちょっとだけ調整したいときにも、根本側の足に余裕が有れば手元で素早く調整が出来る。これが根本側を出し切った状態だと、膝をかがめて次の段を操作しなければならなくなる。

 と言う訳で、とかく早さを求められる写真屋は、三脚の足は先の方から延ばし切る使い方をするのだ。

 しかし、昔の職人さんは良く人を殴ったものだ。自分も何かにつけ殴られた。でもそれは良く無い事だと思う。人を育てる上で体罰は、百害あって一利無しだ。何も良いことは無い。

 なお、自分はこの方法が絶対だと言って人に強要するつもりは無いので、ご自身で実践の際には、ご自身で判断してもらいたい。

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