ここ10年の話、仕事で利用されるのはほとんどデジタルカメラになっている。あまつさえ、入稿に際しては色分解までがカメラマンの仕事になっている。仕事でデジタルカメラを使わなければいけないのなら、当然それしか使えない。これは仕方がない。
でも、学ぶという意味なら、今でもフィルムを体験しておく価値は大いにあると思う。
理由は、写真の仕上げに関する一つの答えを持てる事にある。
例えば、赤い花のデーターが有ったとする。フォトショップを使ったことの有る人なら体験していると思うが、赤と一口に言っても、絵を構成している色はそう単純ではない。赤い色の中に、緑も黄も混ざっている。しかも明度毎に微妙に違ったりする。その赤で、どのように花の立体感を表現する事が出来るだろう?
さらに、背景の中にその赤があるとすれば、そのバランスの中でどのように赤色が出ているのが理想なのだろう?
フィルムはその答えを明確に出していた。
なので、フィルムの仕上がりを知っているといないとでは、フォトショップでの作業効率が大いに違ってくるはずだ。
フィルムと言っても各社各銘柄で特徴が異なっており、用途から選んで利用していた。
以下各社の特徴を挙げるので、これから学ぶ人は参考にしてほしい。
・アグファ
日本人にもファンが多い。色の曖昧さが特徴のフィルムだ。
悪く言えば逆に、明確に「白」とか「黒」と言う色が出ない。
以前、同社のTVのコマーシャルで等伯の松林図が使われた事が有る。
アグファの曖昧さは、美学として水墨画に通じるという事か。
・フジフィルム
ネガポジ共世界を席巻したフィルムには、それだけの理由があると思う。
ネガフィルムの発色は派手では無いが正確で、しかも諧調豊か。
フィルムの方が諧調が豊かと言う人もいるが、それは諧調の出し方の問題もある。
それにしても、フジフィルムのネガの諧調は美しくよく出ていた。
粒状性も優れていた。
・サクラカラー・コニカカラー
黒の締りが特徴と言えば特徴。とにかく下の成分を切り捨てる傾向が強かった。
メリハリが有ると言えばそうだが、暗く濃い色は出にくい。
・コダック
コダクロームもエタクロームもデーター量が多く、印刷でスキャンする際の使いやすさが格段に優れていた。
発色、諧調とも懐が深く、オペレーターの意図によく応えてくれるフィルムだ。
嘘では無い、でも、鮮やか。派手、でも、暑苦しく無い。
そういう色が出ていた。
これらは、メーカーが作り上げ多くの人に受け入れられていた、写真の仕上がりに関する一つの解答だ。ただ、残念ながら、ダイレクトプリントがほぼなくなった現代、紙焼きにかつてフィルムメーカーが意図した仕上がりのすべてが再現されるかどうかは分からない。
ところで、フィルムなら大切に撮るから入魂の一枚になる、と言う人もいるが、実の所それはフィルムかデジタルかという話にはあまり関係ない。写真を学ぶならとにかく数を撮らなくては駄目だ。ケチったら駄目。
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