写真によって人の注意を引くことを考えるなら、それを見せる対象となる人についてよく研究した方がいい。
以前、とある県の観光パンフレットの写真を撮影した事があった。そこには清流で有名な川が有り、当然そこも写真に撮る事になったのだけれども、川の何処を撮れば良いのかは考える必要が有った。
単に美しい写真を撮ると言うのならその川はどこも美しいが、それだと、肝心のその場所へ行く動機にはならないかもしれない。何故かと言うと、パンフレットを見せる対象となる人は関東の人で、関東と言うのは案外川が多いのだ。つまりこれは、川を見慣れた人に川を見に行きたいと思わせる、という意味になる。
それで考えた。上流域は美しいが奥多摩かと言われても区別がつかない。河口域も良いが川そのものの魅力としては力不足。
結局、雄大な自然の中流域を撮影する事にした。そこを選んだのは、関東にはそういう雄大な自然を感じさせる中流域が無く、そこなら関東の人の注意を喚起する事が出来ると考えたからだ。
結果は良かったと思う。
こんな事も有った。学校の校長先生がコイの写真を撮ってほしいと言う。
話を聞いてみると、校長達が参加する写真コンテストに自分も出品したいとの事。もちろん自分が撮った事にしてという事だ。
これはとても難しい話だと思った。コンテストの審査員を納得させ、同時に依頼主の校長も満足させなければいけない。
この案件は、(写真館であるところの)ウチの社長が撮影する事になった。
社長は渾身の一枚を仕上げた。そしてコンテストには落選した。
多分、この企画を考えた審査員のおじさんたちには、通好みのその写真の良さが通じなかったのだろうと思う。
特定の目的を持った写真はやはり、見せる相手について考えなければいけない。
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