ただ、最近の、雑誌等の写真を見ると、中にはどうも頂けない物もある。ピントを合わせる場所と被写界深度の選択が半端で、よく考えられていない感じがするものが見受けられるのだ。
画面の中のどこにピントを合わせるか、そして被写界深度はいか程にするか、これは写真を撮影する者がその意図に合わせて設定するものだ。ここはカメラ任せにはできない。
●どこにピントを合わせるか
基本的には見せたいところにピントを合わせるという事だけど、少し工夫がいる。と言うのは、被写体の内容と構図によって、人はまずどこを見るかが変わってくるから。つまり、フォーカスの位置は構図とセットで考える必要が有る。
基本は以下の2つ
・手前
絵の中では手前に位置する(ように見える)物が最初に注目されやすい。
なので、通常前ボケは不自然に思われる可能性が高い。
例えば、前後に密に重なる大勢の人を撮る時、後ろの方の人がばっちりシャープで前の方の人が微妙にピントを外れた写真になると、なんとなく変に見える。
ピントは手前にあるものに合わせるのが基本だ。
・人の顔、目
人は本能的に、顔、特に目に注意が行く。
なので、いつでも顔は意識して、中途半端な写りにならないように細心の注意を払う必要が有る。
例えば物を食べる人を撮る場合、食べ物が主題だとしても人の顔にもピントを合わせる。もしそれがどうしても無理なら、せめて顔、特に目は画面から外すようにしよう。
また顔のアップについては、斜め向きの顔を撮る場合、手前になる目にピントを合わせるのが無難だ。その方が自然に見える。
●被写界深度の話
被写界深度とは、ピントが合った面の前後のピントが合っているように見える範囲の事だ。Wikipediaでは「写真の焦点が合っているように見える被写体側の距離の範囲」となっている。
以前はよく「ピントが合っている範囲」と簡単に説明されていたけれど、最近の説明では前述のような表記が主になっている。
とすると、絞りを絞ってもピント面は意識するべきものなのだろうか?
その通り。レンズの絞りを絞って被写界深度を稼いだつもりでも、よく見るとやはりピント面が一番シャープに写っている。絞ってもただピント面前後のボケの量が少なくなっているだけなのだ。
とは言え、現実問題そんなに大きくプリントする訳でもないし、レンズだって大きな問題になるほどピント面のみシャープという事も無いだろう。現実的な範囲で被写界深度の範囲を利用しても問題はないと思う。
撮影に際して絞り値はいくつが適切か。これはレンズの焦点距離、被写体との距離、またどんな特性のレンズを使うか、そして何より写真の使用目的による。
適切な絞り値と被写界深度は上記の要素で一意に決められるわけだけど、しかし念の為同じカットを絞り値をばらして撮影しておくのは、(格好悪いと思うかもしれないが)賢明なやり方だ。
被写界深度の選択については、苦い思い出がある。
関係者にはまだ現役の人もいるので詳細は控えるが、以前ちょっとしたプロジェクトで商品撮影を外注に出したことがあった。
そうしたら担当のカメラマンは経験の浅い人で、商品を、今風というべきなのか、かなり絞りを開けて撮影してしまった。(本人としてはその写真にずいぶん自信があったようで、良い写真でしょうと言って持って来たそうだ)
しかし、肝心の商品はボケが過剰で、クライアントはそこが気に入らず、発注元からもその後随分長い事常識知らずと(まあそのようなニュアンスで)非難され続ける事になってしまった。
目的を持って撮影される写真にはやはり、適切な被写界深度の設定と言うものがあるのだ。カメラマンにはちゃんと適切な絞り値で撮って欲しかった。
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