模倣について

 模倣とは一つの表現である。

 人が人のまねをする。これが表現と言うのは一見奇妙に思える。
しかし、真似をする人はその対象を愛するから真似をするのだし、学ぼうと思うから真似をする。
ここに、心の内奥にある原動力がある。
模倣と言ってもその人の中では、何も表現していないという訳ではなく、楽をしている訳でも無い。

 模倣は、芸術の歴史を語る上でも避けて通ることが出来ない。
一つ例を挙げると、「風神雷神図」は多くの画家のテーマになり、模写されているが、特に俵屋宗達の絵を模写した尾形光琳のそれは非常によく似ている。それでもやはり、これを描いた光琳は偉大な画家であり、その評価は揺るぎない。
画家はそのようにして育ち、延いては芸術や文化もそうやって発展して行くという事だ。*1


 写真に模写は無いけれど、やはり真似と言うのは有る。
あの人の写真が好きだ、あの人のように撮りたい、と言うので真似をするのは、大いにありだと思う。表現の長い歴史を見れば、あなたの真似はその流れの中に有ると言える。

 逆に自分が模倣される立場になったとしたら、これはその事に気を害するのではなく、むしろ自分の作品なり方法が人の創作の刺激になっている事を喜ぶべきだ。

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*1 これは勿論、贋作を本物と偽って売っても良いという話では無い。

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