褒める事の勧め

 以前、タクシードライバーをしていた頃、乗客の若いあんちゃんに

「運転上手いですね」

と褒められたことがあった。そうしたらすぐに、その人と一緒にいた兄貴分らしい人がこのような事を言った。

「お前、運転のプロだぞ。プロに向かって、上手いですね、とは、失礼じゃないか。すんませんねぇ」

 何かを褒めたり褒められたりするのにいちいち気を使わないといけないとは、人間関係複雑なものだ。まあ仕方がない。世の中には目下の者から褒められると怒りだす狭量な人もいるのだろう。
(勿論自分はその時全くそのようには感じなかったし、むしろ誰からでも褒められるのは嬉しい)
 
 作品を褒めるというのはどうだろう?
 自分はその作品を作る技術が無いとか到底及ばないと感じる時にも、それでも何か意見を言ってみても良いだろうか?
 
原則としてそれは良いと思う。何かを良いと感じるのは共感だし、その何かを褒めるというそれ自体も表現行為だ。作品を一緒に楽しみ、表現の輪に加わっていると言っていい。
これは作品を発表している者にとって、嬉しい反応だと思う。
生意気なやつだとかそれは的外れとか、そんな事は普通は思わない。

 良いと思ったら、言葉にして褒める。それは基本的に、表現者同士お互いに良い事だ。
その事によって、もしかすると冒頭に述べたように心身ともに疲れたり反省したりしないといけない事態に陥るかもしれないけど、でもそうして行かないと表現者としてより先には進めないと思う。

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